♯密着! 二人の一日〜相方は見た〜♯



 さて、物語を始めよう。
と言っても、今回は物語と言うより中継や実録と言ったほうが正しいかもしれない。
だが、これもまた物語と言ってしまえば結構それで通じるものである。
人というものは案外簡単に納得してしまうものだ。
では改めて、物語を始めよう。


──AM8:00

 家出少女、マナの朝は遅くはない。
八時ごろに起床。それから眠気覚ましに自分で豆を挽いたコーヒーを一杯。
といっても、本人は寝起きが良いので寝起きのコーヒーはもはやマナの趣向だろう。
それから朝食の準備を始める。
マナは米食党なのでもちろんご飯に味噌汁、あとは目玉焼きでも用意すれば完璧だ。
たまに大家が朝食を食べに来るのでちょっと余分にご飯を作っておく。
そうして用意すればいつでも食べられる状況にしてからしばらく待つ。
待つのはヘルではなく大家だ。
約一時間。それまで何をするかが毎朝の悩みの種である。


──AM9:00

 九時になった。今日はどうやら大家はこないようだ。
残念そうにため息をついて、さらに一時間何をするか考える。
ヘルはいつも十時ごろに起きてくるのでそれまでの時間が暇だ。
 「ちぇっ、大家さんのばか」
愚痴をこぼしてテレビに向かう。
テーブルに肘を突きながらテレビを見るその様は主婦そのものだ。

──・・・今日の朝はなんかやってたっけなー。


──AM10:00
 超巻き込まれ型家出ロボット、ヘルの朝は遅い。
十時ごろに起床。それから眠気覚ましにマナが挽いたコーヒーを一杯。
本人は寝起きが悪いので、カフェインを多量に含むコーヒーはもはや彼にとって必需品だ。
それからマナに声をかけて朝食に入る。
彼は別にご飯にこだわりはないのでパンであろうがこめであろうが構わない。
だからといって朝から濃いものは食べたくはないらしい。
 「今日は大家来なかったのか」
 「う、うるさいよ! 黙って食べてて!」
 「ハイハイ・・・・・・ったく、わかりやすい反応だな」
 「なんか言った?」
 「いや、なんでも」
などと、少し掛け合いをしながら食べる。
食べ終わったら二人で食器の片付けだ。
ちなみに大家が来る日は強制的にヘルを起こし、三人で食べる。
食器の片付けはマナと大家の二人で行い、ヘルはテレビ鑑賞だそうだ。


──AM11:00
 さて、これから二時ごろまではマナにとっては慌しい時間で、ヘルにとっては怠惰の時間だ。
マナのすることはたくさんある。まず洗濯。そして軽く掃除。それが終わると昼食のことを考える。
大家が来なかった朝だと朝食が少し余るので楽だが、大家が来た朝だと色々と考えなければならない。
まぁその場合は大家と一緒なのである意味マナにとっては楽しいのだが。
最後に夕食のためにご飯を炊いておいて終了だ。

変わって、ヘルのすることはほとんどない。
洗濯に関しては洗濯物を運ぶだけ。掃除も身近なゴミを捨てるだけである。
もちろん昼食に関して考えることなどあまりなく、その上これらの仕事が大家が来た日は全くのチャラになるのだ。
・・・ここまで来るとわかっていてやっているのかもしれない。

──PM2:00
 これからしばらくの間は、マナはゆっくり出来る時間だ。
テレビを見たり、ゲームをしたり、プラモを組み立てたり・・・。
そしてヘルにとっては、日によっては仕事がある。
 「あれ、ヘル。どっか出るの?」
 「おう。助っ人を頼まれててな。公園でドッヂボールだ」
どうやらヘルは、近所の子どもと仲がいいらしい。
時々助っ人としてドッヂボールやサッカーなどに参加しているそうだ。
ちなみに、マナには秘密にしていることだが、この助っ人というのが数日前に先に連絡を入れた者の方、しかもギャラありというなんともセコい事をしている。
いや、子ども相手になにやってんだお前は。


──PM4:00
 そろそろ夕食の買出しにかかる。
ヘルがいる時は二人で一緒に、大家がいる時は三人かヘル抜きで買い物に行く。
今日のようにヘルが外に出たままで大家もいないとなると、一人で行くことになる。
を考えつつ外出。

──さて、今日は何食べようかなぁ。


──PM5:00
 マナが帰宅すると既にヘルは帰っており、テレビゲームをしていた。
 「・・・・・・」
なんだか釈然としないものを感じる。
 「お、帰ったのか。今日の飯って何だ?」
 「・・・簡単に手巻き寿司。三つ買ってあるから、大きいのはヘルと大家さんの分。小さいのは私ね」
 「了解。んじゃ飯まで時間あるしゲームしてるわ」
 「何やってるの?」
テレビを覗き込む。そこではポリゴンで描かれたロボットがガチャガチャと歩いて敵のロボットと戦っていた。
 「いや、暇つぶしでこれやってんだけど・・・そうだ、連○VSジ○ンやらねぇ?」
 「え、あれやるの? つまんないよ?」
 「いやそれがさ、最近聞いた話なんだが、ククルス○アンの島辺りで旧○ク使って素手だけで戦うとなかなか熱いらしいぞ」
 「おおっ、ステゴロですか!? いいねそれ」
というわけでゲームに突入。
これから大家が来るまで、もしくは六時半ごろまでゲームをすることになる。
夕食の準備が必要な場合はこんな事をしている余裕もないのだが。


──PM6:30
 「あ、そろそろご飯だね・・・大家さん来ないのかなー・・・・・・」
 「ま、今日はなんか忙しいんだろ。こういう日もあるって」
二人で夕食の準備をする。お皿を出したり調味料を用意したり・・・。
ちなみに余った寿司ネタ一皿分は二人で処理する。
それでも余ったらしょうゆに漬けておいて、次の日に食べたい人が漬け丼などをして食べるのだ。
 「手巻き寿司も安上がりでいいが・・・寿司屋で職人が握った寿司ってのはさぞうまいんだろうなぁ・・・オレそんなの食ったことないや」
 「私も。でもそんなお金かかる行為は私たちには夢のまた夢だよ」
 「金かぁ・・・」
惰性で会話が続いていく。
このままゆっくりとご飯を食べ、七時ごろに終了。
そして片付けをするのだがヘルは台所まで食器を運び、後はごろごろとテレビを見るだけだ。
その間マナは余り物の保存をし、食器を洗い、棚に戻し、食卓を拭いてやっと終わりである。
 「ふぅ・・・」

──あれ? この胸に湧き上がるもやもやとしたものはなんだろう?

居間の方を見る。
そこには、テレビを見て爆笑しているヘルがいた。完全にリラックス状態だ。

──あぁなるほど、つまりこのもやもやは・・・。

 「ヘル」
 「んあ? 何だマナ」
 「少しは手伝えッ!」

ずどん。


と、まぁこんな風に一日が過ぎてゆく。
何もないとマナが退屈と言い出だしたり、
零時ごろになるとヘルが寝よう寝ようと騒ぎ出したり、
マナがちょっと拗ねたりと、大家が来ない日はなんだかちょっとおかしい二人であった。


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 「あのさ、まず一つ」
テレビの前でものすごく凝ったビデオを見せられていた少女が声を上げた。
 「なんだよ」
同じく、鑑賞していた白いロボットが聞き返す。
 「なにコレ?」
 「いや、なんだかいつのまにか大家が記録していたらしいぞ、コレ」
 「ってことは全部真実ってことだよね」
いいながら、立つ少女。
 「あぁ。そういうことになるな。っていうか何故立ってるんですかマナさん」
決して顔を見ないようにしながら、ロボットは正座のまま。
 「ってことはヘルがいたいけな少年達からギャラ取ったり、私が忙しいのにほとんど手伝わなかったりするのも真実なんだね」
おそらくその場にいた者なら、マナの背に見える何かがわかったことだろう。
 「チクショウ大家めっ! 余計なことをっ!!」
 「あんたが悪いんでしょぉがあぁっ!!」

 ・・・後に起こったことは、ご想像にお任せしよう。
 「あ、あれっ? これも撮ってるの!?」
だから想像に任せるんだってば。






★★筆者談★★
 はい、どうもこんにちわ。夜に見ている人はこんばんわ。月影です。
どうもこんな稚拙な文章で・・・。

 さて。突然ですが、私は基本的に遅筆です。
ネタが思い浮かばないと数週間から数ヶ月かかってしまうという欠点を持っています。
おのれ我が脳みそめっ!


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