fatherside ] 「明日は」


ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪

「・・・んん」

ぴぴるぴるぴrバシッ!

「・・・やっぱ、前のに戻すかな・・・」
もそもそと布団から這い出しながら、新しい目覚まし時計を睨む。
前にしるぴんが町内の福引きだか何かで当ててきた目覚ましだが、どうにも目覚めが悪い。
というか、何故か流血沙汰の夢をよく見る。
きっとゲームで言うところの、呪いのアイテムってやつの仲間なんだろう。
こういった妙な代物は変わり者の隣人に押しつけるに限るな。
アイツならこういった変な物ほど喜んで受け取りそうだ。
そんなどうでもいい事に溜息をつきながら、眼鏡をかける。
クリアになった視界で例の時計を見やると、いつもより30分以上も早い。
「なんだ、まだこんな時間じゃねえか」
いつもは朝飯のギリギリくらいまで寝ているのだが、ちょいと早く起きちまったらしい。
早起きは三文の得、なんて言うが、オレには30分の損害以外の何者でもない。
とは言え、二度寝するには中途半端な時間だ。
いつも通りのシャツとズボンに着替えると、店に向かった。


随分と見慣れた店内。
それが、朝の静寂の中というだけでこんなにも新鮮に思えるものか。
キッチンやテーブルなどを布巾で拭きながら、そんな事に小さな驚きを覚えていた。
「いや、新鮮・・・じゃあ、ないんだよな」
コンロの周りを布巾でなでながら、苦笑する。
そう、この感覚は新鮮さとは違う。

懐かしいんだ。

考えてみりゃ当然だが、あのガキ共が居つくまではこの静寂が日常だった。
それを少し、忘れていただけだ。

そんな少し寂しいような、それでも悪くない気分で店の掃除を終わる。
時計を見るともうじき朝飯になる時間だった。
布巾をかるく水洗いしてフックにかける。
その時、カウンターの中に貼ってあるカレンダーが目に入った。
納品やら発注やらの予定が書き込んであるやつだ。

「あ、明日だったのか・・・」

そうか、もうそんな時期だったかと頭を掻く。
最近は何だかんだと騒がしかったから、失念していたようだ。
忘れてたなんて、アイツにバレたら怒られるんだろうな、なんて思いながら、つい苦笑が漏れる。

朝の掃除の仕上げに、最近はちょいと使用頻度が高めの「本日臨時休業」の札をドアにかけると、
朝飯を喰いに居間に向かった。


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